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宙組『シトラスの風』

<第12回>

▽宙組公演 ロマンチック・レビュー『シトラスの風』
▽宝塚大劇場1998年4月~5月
作・演出・・・岡田敬二
作品紹介・・・“シトラス”が意味するものは、若々しさ、清々しさ。宙組の出発に相応しく、「誕生」「飛翔」「若葉」などの内容を取り入れた、宝塚の香りと色彩感あふれるレビュー。
作品評★★★★★★★★★☆
鑑賞日・・・2003年3月13日

本作が宙組のお披露目公演でした。スタートのショーということで、プロローグ以外で、4ヶ所も組子全員を登場させているという演出。トップの姿月あさとさんを中心に、若さと勢いに満ち満ちています。
さて、ショーは以下の全8章から構成されています。

   第一章 プロローグ
   第二章 花占い
      「マーガレットの花の精と少女達の楽しいダンス」
   第三章 そよ風と私
   第四章 ノスタルジア
   第五章 誕生
      「瑞々しい若葉とひな鳥の誕生、そして大宙に飛翔していく姿をドラマティックな
      バレエで表現」

   第六章 ザ・ロケット
   第七章 明日へのエナジー
      「現代的な音楽をベースにした、若者達のエネルギッシュな歌とダンス」
   第八章 フィナーレ

プロローグから原色を効果的に配した新調の衣装、照明で岡田ワールドが炸裂し、観客を瞬時に夢空間に引き込んでいきます。各章、分かりやすいストーリーが丹念に描かれているため、一度見ただけで、しっかりとその場面が脳裏にインプットされます。最近の若手演出家の作品は、勢いとセンスで観客を無理やり自分の世界に引きずり込む感があって、年輩の方などは疲れてしまうのではないかと思っているのですが、さすがに岡田先生の作品には各場面に余裕があります。
今回のショーで特に素晴らしい場面は、第二章の“花占い”。これは昭和59年花組『ジュテーム』からのリバイバル。当時若葉ひろみさんが演じられた花占いの少女を、花總まりさんが、約4分20秒も踊りつづけます。素人目で見てもめちゃめちゃしんどそうなダンスを、最後まで笑顔で踊りつづけるあたりはさすがだなぁと感心させられました。
そして、第五章の“誕生”。これは昭和48年月組『イフ・・・・・・』と昭和52年月組『ボーイ・ミーツ・ガール』からのニ場面をまとめたものだそうですが、前半部分での現代社会・現代の人間に対する警鐘と受け取れるメーッセージソングと抽象的なダンスが、宝塚らしくなく斬新な印象を受けました。が、新たな芽(新しい命)が生まれ出てくるセットともに、救いと希望を与えられ、静かな感動を覚えました。
さらに、ベルリン公演でも再演された、第七章“明日へのエナジー”は、ここ数年で最もすぐれた場面の一つ!謝珠栄先生のかっこいい振付に、ゴスペル熱唱!!ビデオで見ただけでも熱くなりますが、やはり大劇場で観た時の大感動は忘れられません。この場面だけでも観る価値があるショーだったと言っても過言ではないでしょう。

で、これだけ素晴らしい作品なのに、評価が★9つなのは、作品・場面が生徒の個性を超えてしまっているような気がしたからです。トップの姿月あさとさん、花總まりさん、2番手の和央ようかさん達は、相応の場面を与えられ、それに十二分に応える存在感を示しているのですが、それに続くスターさんたちは完全に埋没してしまっているように思えたので。

※併演作品…ミュージカル『エクスカリバー』 作・演出 小池修一郎でした。




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